今回は「動脈管開存症」に対するコイル塞栓術についてご紹介いたします。
動脈管開存症は、先天性心疾患の中で最も多いとされている病気になります。
動脈管とは胎児期に開存している大動脈と肺動脈の間をつないでいる小さな血管のことで、通常は出生後速やかに閉鎖しますが、その血管が成長後も残存してしまう先天性心疾患です。
治療は外科的な治療法が推奨されていますが、開胸下での直接結紮、カテーテル治療として、コイル塞栓術とアンプラッツァーによる閉鎖があります。今回は、コイル塞栓術を実施した症例を報告します。
1.基本情報(患者情報および状態の所感)
- 犬種:秋田犬
- 年齢:6ヶ月(手術時)
- 性別:雄
- 体重:13.5kg(手術時)
2.実例(検査~手術~術後までのプロセス)
検査所見
- 聴診 Levine4/6
- LVIDd:39.8mm
- LVIDDN:2.0
- FS:32.3%
- LA/Ao:1.4
- E:0.7m/s
- A:0.7m/s
- PDA血流を確認
- VHS:11.8
- VLAS:2.3
手術所見
- 右内股動脈にシースを挿入し、造影用カテーテルを挿入
- 造影剤を注入し、Cアームで動脈管の位置およびサイズを同定
- 造影剤用カテーテルをPDA内に挿入
- コイルを挿入(コイル径10㎜)
- PDA内部でコイルを巻き、留置
- PDA血流消失をTEEで確認
- ガイドワイヤー、カテーテル、シースを抜去し、定法通り縫合
術後所見
- 手術翌日、聴診にて心雑音Levine1/6
- X-Rayにてコイルの位置確認→OK
- 肺野Clear
- 元気食欲ともに良好、手術2日後に退院した。経過は良好である。
術後検査
- LVIDd:34.5mm
- LVIDDN:1.5
- FS:32.3%
- LA/Ao:1.0
- E:0.9m/s
- A:0.6m/s
- PDA血流は微量に残存
比較画像(術前→術後)
3.最後に
本症例は、コイル塞栓術により低侵襲治療を実施しました。アンプラッツァーに比べて、コストも抑えられ安全で侵襲が少ない方法です。患者さんに合わせて直接結紮かカテーテル治療を選択しております。