今回は「動脈管開存症」についてご紹介いたします。
動脈管開存症は、先天性心疾患の中で最も多いとされている病気になります。
動脈管とは胎児期に開存している大動脈と肺動脈の間をつないでいる小さな血管のことで、通常は出生後速やかに閉鎖しますが、その血管が成長後も残存してしまう先天性心疾患です。
動脈管が出生後も開存していると、心臓に負荷が加わり心不全へと進行します。動脈管を閉鎖させる薬はありませんので、基本的に内科療法での根治は期待できません。動脈管開存症の治療には外科手術が必要で、カテーテルインターベンション治療や外科手術により根治が可能です。
本記事では実際の外科手術の症例をお伝えします。
1.基本情報(患者情報および状態の所感)
- 犬種:トイ・プードル
- 年齢:4ヶ月
- 性別:雄
- 体重:2.1kg
2.実例(検査~手術~術後までのプロセス)
検査所見
- 聴診
左側心基底部にて収縮期連続性雑音聴取。Levine3/6。 - 胸部レントゲン検査
VHS:11.1v CTR:71.6%
心拡大を認める。 - 心臓超音波検査
カラードプラ検査にて肺動脈領域に動脈管の短絡血流確認。
アイゼンメンジャー化は認めず。
手術所見
- 定法通り、肋間開胸
- 動脈管の拍動を用手にて確認
- 結紮糸を動脈管に通す
- 血圧を確認しながら、大動脈側の動脈管を結紮
- 同様に肺動脈側の動脈管を結紮
- 動脈管の拍動の消失を確認
- 定法通り閉胸
術後所見
心臓超音波検査にて、動脈管の血流消失を確認。
経過良好のため、術後翌日に退院。その後の検診にて経過良好。
比較画像(術前→術後)
3.最後に
当院では先天性心疾患の診断、治療を実施しています。
診断、治療および手術についてのご相談がありましたら、当院循環器科を受診していただければと思います。