今回は「肺動脈弁狭窄症」についてご紹介いたします。
肺動脈弁狭窄症は心臓から肺に血液を送り出す肺動脈にある肺動脈弁(またはその付近)が狭窄し、心臓から肺への血液が流れにくくなる先天性心疾患で、心臓病の先天性疾患の中では2番目に多いとされています。
狭窄が重度でない場合は無治療や内科治療で済む場合もありますが、重度な場合には外科手術が必要となります。
カテーテルを用いて狭窄部を広げるバルーン拡張術を行い、カテーテル治療での治療が困難な場合には開心手術が必要になります。
こちらの記事では実際のバルーン拡張術の症例をお伝えします。
1.基本情報(患者情報および状態の所感)
- 犬種:ポメラニアン
- 年齢:2歳6ヶ月齢
- 性別:未去勢雄
- 体重:5.6kg
- 治療:アテノロール
2.実例(検査~手術~術後までのプロセス)
検査所見
- 聴診
左側前胸部にて収縮期雑音聴取。 - 胸部レントゲン検査
VHS:11.0 CTR:65.3% - 心臓超音波検査
肺動脈弁弁性部の狭窄が確認された。
肺動脈血流速:5.8m/s
肺動脈バルーン拡張術を実施。
手術所見
- 経食道エコーを設置
- 右頸静脈にシースを挿入。
- 造影剤を用いて、血管造影。狭窄を確認。
- ガイドワイヤーを用いてバルーンカテーテルを肺動脈狭窄部に誘導。
- 12mmバルーンカテーテルにて肺動脈狭窄部の拡張を2回実施。
- 14mmバルーンカテーテルにて肺動脈狭窄部の拡張を2回実施。
- 減圧されたことを確認し、手術終了。
- 頚静脈を縫合し、定法通り閉創。
術後所見
肺動脈血流速:3.3m/s (術前 5.8m/s)
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3.最後に
当院では先天性心疾患の診断、治療を実施しています。
診断、治療および手術についてのご相談がありましたら、
当院循環器科を受診していただければと思います。